感想・レビュー

2022/12/10

【読書感想】松原隆一郎・堀部安嗣『書庫を建てる: 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト』

  書庫を建てる: 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト 松原隆一郎・堀部安嗣 出版社:新潮社 発売日:2014/02/25  「イエ」を形作るということ  本書を要約すれば、ひとえに「とある学者が自らの蔵書と実家じまいのために家を建てた」本である。"書庫"がゆえに多少なりとも書籍に関する話題があるかと思えば、残念ながらない。この本は、徹頭徹尾、施主と建築家との「イエ」を巡る軌跡を綴っている。  施主である松原氏は社会経済学者である。本書冒頭、今回の書庫建設にいたった動機をご自身の祖父の生涯にまで辿って ...

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2021/8/29

【読書感想】遠藤耕太郎『万葉集の起源-東アジアに息づく抒情の系譜』

  万葉集の起源-東アジアに息づく抒情の系譜 遠藤耕太郎 出版社:中央公論新社(中公新書) 発売日:2020/06/20 日本人のDNAにまで刻み込まれた"抒情"の源  日本最古の歌集『万葉集』。  本書はそこへ掲載された和歌に流れる抒情の系譜の起源を東アジア一帯の少数民族に今なお伝わる"歌垣"に求めるべく、フィールドワークを通じて実証していく意欲作だ。    中尾佐助らが提唱した"照葉樹林文化圏"。それは広義的には漢字を用いて自文化を表現する地域とも言い換えられる。  著者は自身の専門領域である中国・雲 ...

感想・レビュー

2021/10/26

【読書感想】鈴木董『文字世界で読む文明論 比較人類史七つの視点』

  文字世界で読む文明論 比較人類史七つの視点 鈴木董 出版社:講談社(講談社現代新書) 発売日:2020/07/15 文字から見つめる人類の歴史  従来ひとつの指標とされてきた「四大文明」を離れ、現今の五大文字圏を基軸とした新たな文化圏を構築し人類の歴史を再認識しようとする意欲作。本書は、文明・文化への明確な概念整理を示したうえで、科学や宗教、文学・思想・組織、果ては衣食住やグローバリゼーションなど広範なジャンルの比較検証を行っている。  それはラテン文字を中心として「西欧キリスト圏」、ギリシャ・キリル ...

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2018/8/30

【読書感想】坂口三千代『クラクラ日記』(ちくま文庫)

 無頼派の小説家・坂口安吾の妻・三千代さんが書いたエッセイ『クラクラ日記』。前回、無頼派ゆかりのバー『ルパン』の記事を書いて思い出した。  表題の“クラクラ”は安吾の死後に三千代さんが開いたバーの店名で、フランス語で「野雀」や「垢だらけの~」という意味の“cracra”からきているそうな。命名は獅子文六氏によるらしい。    本書は安吾との出会いの場面からはじまる。  坂口安吾という作家について多少なりとも知る人ならばその破天荒なエピソードの数々は語るまでもないが、他によるまでもなく本書で十二分過ぎるほど ...

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2024/5/24

【読書感想】岡田利規『掃除機』

掃除機 created by Rinker 白水社 Amazon 楽天市場  掃除機 岡田利規 出版社:白水社 発売日:2023/03/16 日本語、その可能性とは?  正直なところ、自分は本書をどう批評するかの言葉を持っていない。  そもそも戯曲である以上、そこで扱われる言葉は舞台上で評価されるべきだと思うし、その舞台の礎としての台本であるにせよ読み物として本書を扱うべきなのか否か、迷うところである。それ以前に、本書に収録されている作品は日本語で書かれたものでありながら、初演はすべて海外でその ...

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2021/11/27

【読書感想】苫米地英人『思考停止という病』

  思考停止という病 苫米地英人 出版社:KADOKAWA 発売日:2016/03/26 「ノーマル」を徹底的に疑うこと  「思考停止」という言葉が人口に膾炙して久しい。とはいえ、思考停止している当人らはそのことに気づくことはない。それこそまさしく「思考停止」の状態なのだが。……  本書では「思考停止」に陥る原因とその脱却の秘訣を事細かに解説してくれている。  結論、思考停止に陥る原因は圧倒的な知識不足とゴールの不明瞭さに他ならず、これは想像に難くないところだ。  ではどうやってその状況からの脱却を図るの ...

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インド哲学仏教学

2023/6/10

『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その4(Ⅰ・31~39)

       4回目は第1章31~39節。  記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで)       テキスト   ①nimittāni ca paśyāmi viparītāni keśava /  na ca śreyo'nupaśyāmi hatvā svajanamāhave // 31 // ②na kāṅkṣe vijayaṃ kṛṣṇa na ca rājyaṃ sukhāni ca /  kiṃ no rājyena govinda kiṃ bh ...

インド哲学仏教学

2026/8/4

【ヒンドゥー教の聖典】『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!~前説~

      目次  まえがきと若干の解説  『バガヴァッドギーター』テキスト  参考文献        【本編】  ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その1(Ⅰ・1~11)  ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その2(Ⅰ・12~19)  ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その3(Ⅰ・20~30)   ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その4(Ⅰ・31~39)  ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その5(Ⅰ・40~47)  ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!そ ...

インド哲学仏教学

2023/6/10

インド二大叙事詩とヒンドゥー教の聖典について

【改訂記録】 ・2021/02/24 「あらすじ」欄に各巻・章のタイトル追記。   前説  インドの二大叙事詩『マハーバーラタ(Mahābhāratam)』と『ラーマーヤナ(Rāmāyana)』、そしてヒンドゥー教における最高の聖典と称される『バガヴァット・ギーター(Śrīmadbhagavad gītā)』について、その概要をまとめてみました(個人的な復習の意味も含め)。  かなりザックリとしたまとめになっていますが、本記事はちょっと実験したい部分もあって、今後も随時改訂したりしていきたいと思います。 ...

インド哲学仏教学

2023/6/10

『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その3(Ⅰ・20~30)

       3回目は第1章20~30節。  記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで)       テキスト   ①atha vyavasthitāndṛṣṭvā dhārtarāṣṭrānkapidhvajaḥ /  pravṛtte śastrasaṃpāte dhanurudyamya pāṇḍavaḥ // 20 //  hṛṣīkeśaṃ tadā vākyamidamāha mahipate /  senayorubhayormadhye rath ...

インド哲学仏教学

2023/6/10

『バガヴァッドギータ―』原典訳してみた!その1(Ⅰ・1~11)

 さて『バガヴァッドギータ―』原典訳してみた!の一回目は第1章1~11節までです。  今回扱うテキストについては前説編を参照のこと。 テキスト   ①dhṛtarāṣṭra uvāca /  dharmakṣetre kurukṣetre samavetā yuyutsavaḥ /  māmakāḥ pāṇḍavāścaiva kimakurvata saṃjaya // 1 // ②saṃjaya uvāca /  dṛṣṭvā tu pāṇḍavānīkam vyūḍhaṃ duryodhanasta ...

感想・レビュー インド哲学仏教学

2024/3/24

【読書感想】ヴィヤーサ著・石原美里訳『邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻』

  邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻 created by Rinker Amazon 楽天市場  邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻 ヴィヤーサ 著 / 石原美里 訳 出版社:パブファンセルフ 発売日:2024/01/29 愛する者を失った悲しみと屈辱  インドの二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』。そのうち『マハーバーラタ』(以下MBh)の第11巻「Strī-Parvan」の日本語訳注本。  MBhの日本語完訳は未だなされていない。故上村勝彦博士による翻訳は、急逝のため第8巻途中までにとどま ...

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後鳥羽院project

2024/1/8

【隠岐ふたたび…】RE:後鳥羽院を巡るフィールドワーク~前編~

      目次 ・プロローグからの隠岐へ ・「お腰掛けの石」のこと ・隠岐の夜 ・後鳥羽院の気配 ・夕すゞみ あしの葉みだれ よる浪に        Amazon  菊帝悲歌: 小説後鳥羽院 (河出文庫)       プロローグからの隠岐へ ママ「あのね8月の隠岐の件だけど、あれ、わたしキャンセル……」    それは歳の離れたお友達、後鳥羽院単推しの例のママからの唐突な電話だった。  ママとは前年(2022)中に隠岐再訪を計画していたものの、私の身辺でのゴタゴタ続きなどで結局行けずに終わった。それゆえ今 ...

後鳥羽院project

2021/12/8

藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その5(建暦元年~建暦2年)

     後鳥羽院の姿を記録する主な公家日記3  (甚之助蔵 『源家長日記』風間書房、昭和60年。『続史料大成21 伯家五代記』臨川書店、昭和42年。藤原長兼『増補史料大成31 三長記』臨川書房、昭和40年。藤原経房『史料大成22・23 吉記』内外書籍、昭和10年)   ・【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏   ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻)   ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻)   ・その3 元久2年~建永元年(第1巻)   ・その4 承元元年~承元2年(第2巻) ...

後鳥羽院project

2021/12/17

藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻)

     後鳥羽院像に迫るための資料  (甚之助蔵 『大日本史料』第4輯、東京大学史料編纂所、昭和43年)   ・【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏   ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻)   ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻)   ・その3 元久2年~建永元年(第1巻)   ・その4 承元元年~承元2年(第2巻)   ・その5 建暦元年~建暦2年(第2巻)   ・その6 建保元年~建保6年(第2巻)   ・その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻) 目次 ●藤原定家 ...

後鳥羽院project

2022/2/4

藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その1(治承4年~建仁元年)

     (甚之助蔵 藤原定家『明月記』全3巻、国書刊行会、明治44年刊)    さて、フィールドワーク編も終わったということで、これからは例の後鳥羽院単推しのママとの共同研究(←大袈裟w)をちょいちょい記事にしていってみようと思います。  まずその最初に、生前の後鳥羽院の姿を知る上で貴重な史料となる歌人・藤原定家の日記『明月記』に描かれている院像を見ていきます。  今回は"その1"として後鳥羽院の名前が出ている『明月記』の記事の年月日をピックアップし、その時期に院と定家はどのような関係性・交流があったか ...

後鳥羽院project

2022/12/15

後鳥羽院『遠島御百首』私見その1~春 ニ十首~

      ・その1~春 二十首~ ・その2~夏 十五首~ ・その3~秋 二十首~ ・その4~冬 十五首~ ・その5~雑 三十首(上)~ ・その6~雑 三十首(下)~       はじめに・・・  私を後鳥羽院がらみの研究(?)に誘った例のママは、最近は以前にもまして悠々自適の生活をしているらしい。なんでも「野垂れ死にが理想の死に方」なのだそうで、いまだ某ウイルスの話題に事欠かない昨今ながら、全国各地を転々と飛び回っているらしい。  そんなママから最初に後鳥羽院の話しをもらった時、見せられたノートがあった ...

後鳥羽院project

2021/12/8

藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その6(建保元年~建保6年)

     後鳥羽院像に迫るための資料  (甚之助蔵 『宸記集』藝林社、昭和49年。田邑二枝『海士町史』海士町役場、昭和49年)   ・【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏   ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻)   ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻)   ・その3 元久2年~建永元年(第1巻)   ・その4 承元元年~承元2年(第2巻)   ・その5 建暦元年~建暦2年(第2巻)   ・その6 建保元年~建保6年(第2巻)   ・その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻 ...

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レポート

2018/8/23

銀座の老舗バー『ルパン』で呑む

 日本屈指の繁華街、東京・銀座。  和光の時計台は海外の旅行者からも人気のスポットですが、そこからほど近いところにあるのが老舗バー『ルパン』。  創業は昭和3(1928)年。開店時には当時近くにあった文藝春秋社の面々からの支援があり、以来文壇バーとして知られています。  注:本記事にはお酒にまつわる記述がありますが、飲酒を勧めるものではありません。    また、未成年の飲酒は法律で禁止されています。    成人であっても節度とマナーを守って過度な飲酒は控えましょう。    飲酒運転は絶対やめましょう。 猪 ...

レポート 後鳥羽院project

2022/2/24

【とはずがたり】「『明月記』の後鳥羽院」よもやま話

       調査・研究に用いているノート。    「藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿」調査中の机の上w   目次  ・きっかけ  ・隠岐、集中豪雨  ・愛憎半ば、悲喜交々 その1  ・愛憎半ば、悲喜交々 その2  ・ママ、クルマにはねられる  ・『吉記』のこと  ・青天の霹靂  ・ママ、怒る!  ・老いたる定家と後鳥羽院  ・拝啓、藤原定家さま    Amazon  夢のなかぞら―父 藤原定家と後鳥羽院   ・きっかけ   「まあ、またなんとも面白そうなことを……」        2021年春、私は ...

レポート

2020/5/1

【文豪ご用達w】老舗旅館『鳳明館』に泊まってきたときの話し【文京区本郷】

         ※2019年年末に宿泊しました。        Amazon  「谷根千」地図で時間旅行        コロナウイルスの問題で自粛の風吹き荒れる昨今ですが、今年三月、東京文京区にある老舗旅館・鳳明館からこのようなプランが発表されてのをご記憶されているでしょうか?  ●「先生、進んでますか?」進捗コールも完備。旅館「鳳明館」にて、大正・昭和の人気作家になった気分を味わえる「文豪缶詰プラン」 (かーずSP 2020年3月9日)  現在はテレワークにも対応したデイユースプラン「3密・心配ご無用 ...

レポート 考察

2023/6/3

【私的愛用品】ツバメノート「KB4」考

      目次  ・「KB4」のココに注目!  ・「KB4」今昔物語  ・私的使用法         大分前に本家の方で書いた「私の文房具【私の本棚 余談】」でチラッと紹介した私愛用のノートについて、ここ10年来でいろいろ変わって変化があったのでそこを深堀りしてみようと思います。時代の流れというのか、発展でありまた淋しくもある変化の詳細です。  件のシリーズ「私の本棚」も、あれ以来書斎の模様替えなど相俟って、今では本棚に並ぶ背表紙も大分変わりました。昨今は専門とするインド哲学仏教学と、ここ数年かかずらわ ...

レポート

2019/2/6

【溢れ出る昭和感】新宿の老舗食堂・長野屋で定食を食べる。

 さて昨年末に上京していた折、久々に行ってみたのでサクッとレポートです。都内住のころ新宿界隈で用事があるとき、食事時なり小腹が空いたときなどにちょいちょい食べにきていたお店。   あのころangle 街と地図の大特集1979新宿・池袋・吉祥寺・中央線沿線編 Kindle版 風景は記憶の順にできていく      新宿駅東南口を出てすぐ。様々な飲食店がひしめく新宿の街のなかでひときわ異彩を放っているのがここ「長野屋」。        この建物に見覚えのある方も多いはず。  こちらの長野屋さんはその外観からもわ ...

レポート

2023/7/8

【23区唯一の渓谷】等々力からめぐる東京古墳散歩♪

       Amazon  私のオアシス 等々力渓谷       ※今年(2023年)03月にした散歩です。        例のウイルスも収まりをみせ、所用をかねて上京した折、長い付き合いの知人家族から「朝食でも食べにおいでよ~」とお誘いを受けたので、散歩がてら東京・世田谷区から大田区にかけての多摩川沿いを歩きました。  件の知人宅は東急東横線の多摩川駅が最寄りなのですが、今回は大井町線等々力駅からの出発。        早朝だから人通りもまばら。そういえばこの駅前も再開発云々でいろいろ変わってたな。 ...

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